天音とはおよそ一年前に会った
医師免許を持っていたあたしに華は彼の治療を頼んだ
「免許を持っているのは確かだけれど何であたし?」
「芽衣子さんにしか頼めないからです」
華はそう言っていたけれどどうやら彼は"ワケあり"らしい
はじめて見たときの彼は動物に例えると狂犬だった
近寄りがたい雰囲気でうっかりよると噛みつかれそうだ
それが今じゃ、華対して完全に忠誠心が備わっている
あたしが知らない間に華と天音に何があったのか、それを知るのはできないだろう
「!」
その時、テーブルの上に一枚の紙が置かれていた
昨日まではなかったのに……まさか……華が?
恐る恐る紙を取って裏返して見る
そこには一言[ごめんなさい]と書かれていた
「……っ、何がっ、何がごめんなさい、よ……!」
華のバカ、これを書くならあたしにあんな事言わないでよ!
あたしは紙を胸の前で握り締めて泣き続けた
華は復讐を終えるまで止まらないだろう
だったらあたしができる事は……
「そうだよ、関係を切られたからってあたしがやる事は変わらないんだ。
……姉さん、あたしが華を止めて見せる」
だから、見守っていてね
手で乱暴に涙をぬぐい、あたしは決心した強い思いを胸にした
side end.