恋を届けるサンタクロースvol.1~沙希~

 かわいい彼女になれる言葉があったはずなのに……。

 後悔してるのはあたしの方だ。

 あーあ。佑樹は今頃コンビニでチキンでも売ってるのかな……。

 ふう、とため息をついたとき、ケーキショップの中から女性店長の声が聞こえてきた。

「笹川(ささがわ)さん、ありがとう、お疲れ様。おかげで完売したわ。もう上がってくれていいわよ」
「あ、はい」

 ケーキショップなので控え目とはいえ暖房のかかっている店内に入るとホッとした。トナカイスーツの帽子を背中に落としながら、店内を見回す。

「あれ、サンタさんは?」
「サンタさん?」

 あたしの言葉に、店長さんが怪訝そうに首を傾げた。

「バイトのサンタさん。あたしと一緒に外でケーキ売ってた……」
「バイトは笹川さんひとりよ。サンタは、ほら、私」

 店長さんが頭の上の赤いフェルトの帽子を持ち上げてみせた。そういえば、店長さんは赤いワンピースタイプのサンタコスチューム姿だ。