恋を届けるサンタクロースvol.1~沙希~

「男のサンタさん、いませんでした?」
「いないわよ。斜め向かいのライバル店にはいるけど」

 言われてあたしは店の外に出た。たしかに車道を挟んだ斜め向かいもケーキショップで、そちらは残っているケーキを売るために、男子大学生のサンタが声を張り上げている。

 おかしいなぁ。

 絶対いたはずなのに。

 首を傾げながら店内に戻ろうとしたとき、遠くからあたしを呼ぶ声が聞こえてきた。

「沙希!」

 驚いて振り返ると、手を振りながら歩道を走ってくる佑樹の姿が見えた。

「佑樹?」

 佑樹はあたしの前まで走って来て、膝に手をあて、息を切らしながら言う。

「沙希は……バイト、終わった?」
「え、あ、うん。今から着替えるとこ」
「そっか、よかった。じゃあ、今から一緒に過ごせるな」
「今から一緒に?」

 どういうこと?