「これ…!今日の調理実習で作ったんです!よかったら食べてください!!……キャー!!!」

可愛らしいピンクのフリフリした包装紙を押し付け、顔を隠しながら走り去る女の子。

「キャーって…」

あの子、ちゃんと前見えてるのかしら?
こけて怪我しないならいいけど。

なーんて、とんちんかんなことを考えながら、机の上に並んでる、同じようなピンクの物体を見る。

1、2、3…これで9個目か。
形からしたら、マフィンっぽい。
こんなに食べれないよ。

軽くついた溜め息を加奈は目ざとく見つけ、

「なーに?モテ自慢?」

クスクスと笑う。

花が咲くような笑顔とはこんな顔を言うのだろう。
少し茶色がかった大きな目に、長くカールしたまつ毛。
色白の肌に赤い唇が映える。
背中の真ん中くらいまで伸びたさらさらした髪。
力を入れて抱き締めたら、折れそうなくらい華奢な身体つき。
まるで甘い砂糖菓子を連想してしまうような風貌だ。

「女の子にモテてもねー」

橘 明希 ー 15歳。
高校に入学して3ヶ月がたつ。