好きやった。



ウチの胸が嫌に騒いでいる音が、耳元でどくんどくんとこだましている。


「だーかーらー! 彼女ができたんやって、昨日!」


ほんまに今年一番のビッグニュースやろ?って、月島が無邪気に笑う。

嬉しそうに話す月島の頬はうっすらと赤みを帯びていて、きらきらと輝く瞳には恋の熱が宿っていた。

それをはっきりと自分の目で確認した瞬間、さっきから響いていたどくんどくんという鼓動の音がさらに加速する。

騒いでいるその場所が熱くなって、額にもじわりと汗が滲む。それなのに、頭の中だけはすっと冷え込んでいった。


「……月島って、好きな人おったん?」


なんなん、彼女って……。

今までそんな好きな人の話とかしやんだし、そんな気配だって全然させてなかったやん。

それやのに、なんで……なんで、いきなりそんなことになるん?


疑問ばかりが頭の中を支配して、最初に口からでてきたのも疑問だった。

ずっと笑顔のままの月島を直視することができなくて、体育館のライトを反射させている床に目を向けた。

モップがけをしてぴかぴかな綺麗な床には、向かい合っている二人の姿が薄く写り込んでいる。


「いや、おらんかったんやけど……。昨日、告白されてさ」

「ふーん、誰に?」


冷静なフリをして口を動かす。


月島が告白されたなんて、全然知らなかった。しかもそれが昨日やなんて。

部活が終わったあともいつも通り挨拶をして別れたけど……もしかして、そのあとに告白されたとか?

いろいろと考えを巡らせるけど、月島の話はウチが想像しているものとは見事に違っていた。