好きやった。



「くだらん話っちゃうわ! 今日の話は今年一番のビッグニュースやで!」

「それ、昨日も言うとらんだ? 確か……慌てて食べた肉まんが激アツで、口の中を大火傷したっていう話で」

「あれは昨日の朝の時点での話や。今年一番はまた更新されたんだよ!」

「……へー、2日連続で今年一番が出るとか、大層楽しい人生ですねー」

「やろー? やっぱそう思うよな!? 俺の人生は、きっと今がピークやな!!」


ウチの棒読みの台詞など全く気にしていない様子で、ハハハッという軽快な笑い声を出す。

こりゃあかなりご機嫌みたいだから、本当にビッグニュースの気配がしてきた。もちろん、くだらないという意味で。


でも月島が本題を切り出す前に更衣室に着いてしまい、会話は一度中断するはめに。

まあ、着替えてウォーミングアップしながら、ゆっくり聞いたろうかな。

そんなことを悠長に考えながら、更衣室のドアノブに手をかけた……そのとき。


「――俺な、彼女できた!」


……それは、唐突に告げられた。

いつも聞かされるくだらない話をするときとなんら変わらない、いつもの月島のよく通った声で。


「……は、今、なんて……?」


月島の声は、ちゃんと聞こえていた。内容だって、聞き取れている。

それでも耳から流れてきた情報を頭が上手く処理しきれなくて、気づけば振り返り、間抜けな声でそう聞き返していた。

振り返ったウチの目には、にこにこと笑っている月島の姿が映っていた。

その笑顔は普段ウチや友達に見せているものとは違って、バスケをしているときのものともまた違う。

そんな……優しさだけを詰め込んだような甘い笑顔なんて、今まで一度も見たことがなかった。