好きやった。



結局ウチらの根本的な気持ちは、交わることなんてなかったんだ。

ウチの報われない気持ちなんて、伝えるべきじゃなかった。
月島の心があの子のものになった状態で伝えても、何も得られないのだから。

……この脆い友達の関係が、崩れてしまうだけなのだから。


「井ノ原、俺はっ……」


月島が何かを言いかけると、耳を両手で塞いで首を横に振る。何も言わないでと、拒否するように。

ごめんな、勝手なことばかり言って押しつけて。

でも……こうするしかできやんの。

ウチは本当の意味では、月島の背中を押せる友達にはなれなかった。

おまけに想いを告げて困らせて……。

そんなウチが月島のそばにおることを、ウチ自身が許せやんのよ。


ぎゅっと一度瞼を閉じてから、月島のことを見ようと前を見た。

悔しそうに唇を噛みしめている月島に、そっと笑いかけた。


「――バイバイ」


それだけ言うと、月島と歩いていた方とは逆向きに走り出した。

月島はウチの名前を呼ぶことも、追いかけてくることもしなかった。

自分が望んだことなのに……すごく胸が痛い。



――『井ノ原。また明日なー!』

――『……またね!』



もう、いつもの挨拶を交わすこともない。

バイバイ……バイバイ、月島。



 ×××



翌日。

初めて朝練を休んだ。

月島に会いたくないって、……会えるわけないって、心の底から思ったから。


「……亮子、ほんとによかったん?」


休み時間。

机に伏せていたウチの頭上に、留美の疑うような声が降りかかる。

ガタンと椅子が引かれる音がしたから、たぶんウチの前の席に座ったのだろう。