「月島だって、悪気があったわけやないんやし……。あんな泣いて駄々こねて、一方的に大キライって言うとか……ありえやん」
あの子は喧嘩の途中で、何気なく言っただけかもしれない。
でも月島は……その一言で傷ついてる。ショックを受けている。
それが許せなかった。
好きならちゃんと……月島の気持ちも考えてあげてほしかった。
嘘だとしても、大キライなんて言わないでほしかった。
好きな人と両思いになれて、日々月島の心を独り占めするあの子。
ウチがほしいものを手にしておきながら、大切にせずに傷つけるなんて……。
許せやん、わがままやよ。
「好き勝手言って、ほんま最低や、――」
「――もうええよ、井ノ原」
言葉を遮られて、暴走していた喉がぐっと締めつけられたように思えた。
そろりと月島の様子を窺えば、悲しそうに笑っていた。
「井ノ原の気持ちはわかったから……やからもう、やめてくれ」
「つき、しま」
「美亜のこと、それ以上悪く言うな」
悲しげな雰囲気はまとったままなのに、ウチを真っ直ぐ見据える目だけは熱い意志を秘めていた。これ以上喋らさないという圧力をひしひしと感じる。
唇をきつく噛みしめると、その目から逃れるように俯いた。
……怒ればいいのに。
彼女のこと悪く言われて嫌なら、ウチにもっと怒るべきだ。でも月島は怒らない。悲しい顔で静かに牽制するだけ。
それは月島なりの優しさの欠片なのかもしれないけど、ウチにはその中途半端な優しさの方がつらかった。
結局月島が一番大切なのは……あの子。
当たり前に守ろうとするのは、彼女だけなんだ。



