好きやった。



なかなかの厚さの問題集。

冬休みの間にこれを終わらせなければいけないのかと思うと、余計に手に重みが加わるような気がした。

紐の結び目をしっかりと持って、職員室のそばの階段に向かう。

――と、そのとき。


「将太くんなんて大っキライ……!」


よく知る名前を、どこかで聞いたことがあるような声が呼んでいるのが耳に入ってきた。というか、叫ぶようなその声が階段に反響してる。

何事かと驚いて階段に向かっていた足が止まっていると、一人の女子生徒が目指していた階段から飛び降りるような勢いで下ってきた。

そしてウチが歩いてきた廊下とは逆方向に向かって、そのまま走っていってしまった。


「あれって……」


一瞬のことだったけど、走り去るときに横顔がしっかりと見えた。

あの子……月島の彼女やん。

ていうか、さっきの言葉から察すると……。

そろりと階段に近づいて上を確認すると、いた。踊り場で呆然としているアイツが。


「……あの子、追いかけやんでええの?」

「……え? ……ああ、井ノ原……」


月島がいる踊り場まで上って声をかけたけど、放心状態になっているみたいで返ってきた言葉は心もとない。


「あの子、泣いてたけど? ええの?」


さっき見たあの子の瞳からは、確かに涙が流れていた。

直前に聞こえた言葉から考えると、涙のわけに月島が関わっているのは間違いないだろう。それなのに、放っておいてもいいんだろうか。


「……もう、手遅れや」

「は?」

「あかん、俺。美亜に嫌われた……」


顔を片手で押さえて上を向くと、月島はそのまま背後の壁に力なくもたれかかった。突いたら倒れてしまうんじゃないかってぐらい、ふらふらとしている。