好きやった。



「俺、この選手のこの技が好きなんさ」

「わあ、すごく難しそう」


小声で盛り上がりながら話す二人は、時折雑誌から目線を逸らしてはお互いに微笑みを向けていた。

見ているだけでわかる相思相愛の顔。

ウチには向けられない想いがこもった表情を、独り占めできるあの子が羨ましい。

羨ましくて……悔しくて、悲しくて。

朝からいつも以上にダメージを受けていた心が、さらにずきずきと痛み出す。

そして膿んだ傷口から、恐ろしいほどに嫌な感情が漏れ出すのを感じた。


なんで……、なんで、あの子なんやろう。

あの子よりもウチの方が先にアイツに出会って、好きになって。

そばにいて仲良くしてきた時間も、想いを募らせてきた時間も、ウチの方が断然長いっていうのに。

どうしてウチは、アイツの心が手に入らんの?

どうしてウチが一番ほしかったアイツの気持ちを、あの子が持っとんの?

なんでなん……。


綺麗な黒髪を片耳にかけながら、愛くるしい瞳をアイツに向けるあの子。

そんなあの子を穏やかな笑顔で見つめるアイツ。


「……っ、」


血が滲み出るほどきつく唇を噛んで、そんな想い合っている二人の光景にくるりと背中を向ける。

そしてそのまま、何を得ることもないまま図書室をあとにした。

ただ無駄に傷ついて、勝手に嫉妬して。自分のバカさに後悔しただけだった。


……わかっとるよ。

なんで、アイツの心があの子のものになったかなんて。

あの子はちゃんとアイツに、好きだと伝えた。その想いが行動となって形になったとき、アイツに伝わったそれがアイツの心を揺らしたんだ。