好きやった。



あのときは確かにたくさん泣いた。しかもいつ他の朝練のメンバーが来るかわからない、無防備な更衣室で。

まあ、最初に来たそのメンバーが留美だったからよかったという話だけど。


「うん、まあね……涙は出やんだよ。ショックやったんは確かやけど、アイツの前では平気なフリしやなあかんって、思っ……思っとったから……ぐすっ」

「えっ、ちょっ!? まさかここで泣く?」

「な、泣いとらんよ。でもちょっと思い出したから……」


言葉が途切れてしまったことで留美がかなり慌て出したけど、実際は泣くところまではいっていない。

嗚咽が漏れそうになったし、鼻水がちょっと出そうにはなったけど……。

ぐっと息を止めて、きつく瞼を閉じた。


聞きたくない話を、平気なフリをして聞いていても。やっぱりそれは、ただの強がりでしかない。

彼女との話を嬉しそうに話すアイツに合わせて、同じように笑ってみせていても。本当は心の中ではいつも泣いている。


……ウチだって、好きでアイツの話を聞いとるわけやない。

アイツが大切に想っている彼女のことを、本当は聞きたくなんかない。どんどん仲良くなっていく二人の付き合いの過程なんて、アイツの口からこと細かく知らされたくない。

甘い声であの子の名前を呼ばないで。
その手や腕や唇があの子に触れる様なんて、ウチに想像させやんといて。

ウチが目の前で泣きそうになっとることに、ちょっとは気づいてよ……。

何度だってそう思った。