好きやった。



絶対口に出してなんか言えないどす黒い感情。それは月島の背中を見ながらドリブルをする手に伝わる。

激しい音が鳴るけど、いつもの話……彼女の話を始めた月島の耳には、それはなんの意味も持たないただの邪魔な音として届いていることだろう。

それはわかっているけど、わざと強くボールを床につき続けた。言葉にできない苛立ちを、無言のまま訴える。


「美亜と付き合い出してから、毎日が楽しすぎるわー」


これは、最近の月島の口癖。

毎日毎日、彼女と過ごす日々のことをとても大切に語る。


「幸せすぎて死にそう」


……なんて言いながら、本当に愛おしそうに笑う。

あの子がいなくてもこんな顔になるのだから、きっと本人の前ではもっと優しい顔で笑うのだろう。

ウチの前では絶対に見せることのない顔を、あの子になら見せるんだ。

親しげに下の名前で呼んで、手を繋いで肩を並べて歩いたり、壊れ物を扱うように抱き締めたり……。

そういうことを、月島はあの子としてるんやよね。


付き合い出してからのことを、月島はご丁寧に細かく話してくれている。

名前を呼び捨てにするのはなかなか慣れなかったとか、繋いだ手がやわらかくて緊張したとか、抱き締めた身体のぬくもりにドキドキしっぱなしだったとか。

アイツのあの子を想う気持ちを、全部聞かされてきた。

耳を塞ぐことできずに、ずっと。


「……今日はやけに上機嫌やね。なんか、ええことでもあったん?」


鼻歌を歌いながら幸せだと繰り返す月島に、ぽつりとそう尋ねた。

バカやな、ウチも。

自分が傷つくだけなのに、余計な話を聞き出そうとするなんて……。