好きやった。



「よかったやん、ええ子と付き合えることになって! その子のこと、ちゃんと大事にしたらなあかんよ?」

「ありがとな、井ノ原。もちろん大事にするさ
!」


月島は力強く頷いた。

月島ならきっと、口先だけでなくちゃんと彼女を大事に想っていくだろう。

そういう優しさと真面目さがあるいいやつだってことを、ウチはちゃんと知っとるよ――。



月島との話を終えて、ウチはやっとのことで更衣室に入った。

だけどドアを閉めた瞬間、ドアに背中を預けてずるずるとその場に座り込んでしまった。

……ああ、なんでこんなことになったんやろ。


「……うぅ、」


そう思った瞬間、月島の前では我慢しなくちゃと張り詰めていた気持ちが、ぷつんと途切れて。

嗚咽が漏れて、涙が瞬きと共に頬に流れ落ちた。

慌てて両手で顔を覆うけど、肩が小刻みに震えたままだった。


……なんでウチは、こんな未来が訪れることを想像しなかったんやろう。

ウチがどれだけ月島のことが好きやとしても、そんなの関係なしに月島に好きな人や
彼女ができる……その可能性は前からいくらでもあったのに。

どうしてウチは、その可能性を予知していなかったんだろう。

バカだなあ、ウチ。ほんまに、バカやん。

今はただの友達の関係やけど、いつか月島にウチのことを好きになってもらったらええって、心のどこかで都合のいいことを考えていたのだから。都合の悪い可能性なんて考えずに。


「~っ、月島の、アホォ、ッ……」


アホ、バカ野郎。

そりゃあウチが告白もせずにぬくぬくと友達関係を続けてきたのも、こうなると自業自得やけどさ。

4年も友達やってきてるんだから、ちょっとはウチの気持ちにも気づけよ、この鈍感野郎!