「1年で吹奏楽部の子。同じ塾に通っててさ、昨日、塾が終わったあとに告白されて。それで付き合うことになった」
「……そうなんや。その子と、仲良かったん?」
「いや、そんな特別仲がええってわけやなかったけど……」
は? それやのにいきなり告白オッケーしたん?
思わずそう言ってしまいそうになったけど、月島の言葉が続きそうだったからぐっと堪えた。
「……けど、俺が通っとる塾は個人経営で規模も小さいから、挨拶とか話ぐらいはしたことあったよ」
「ふーん……」
「大人しいけど面倒見がよくてさ、よく問題がわからんと困っとる子に教えとったりする優しい子やよ。勉強熱心で、自分がわからんことはよく俺にも聞いたりしとる」
それは月島に気があったから、近づくためにわざと聞いとったんとちゃうの?
……なんて言葉が出そうになったけど、またすんでのところで言うのを我慢した。
あかん、ウチ……。
今口開いたら、最低なことしか言わん気がする。
そんなウチが背中に隠した拳をぎゅっと硬く握りしめて震えていることなんてつゆ知らずに、月島は上機嫌にぺらぺらとビッグニュースの詳細を話し続けた。
「……まあ、そういうええ子でさ。好きとか意識したことなかったんやけど、告白されて急に意識しだしたっていうか……」
もうええよ、十分やから。
それ以上その子の話なんかしやんといて。
「『春に初めて出会ったときから好きでした』って、顔真っ赤にしながら言ってくれたときな、すっげー懸命に伝えてくれたんやなあって思った。なんかその姿がめっちゃ可愛く見えてきて……俺、あの瞬間に一目惚れしたんやと思う」
……そんな誰かを想って照れた顔なんて、ウチに見せやんといてよ。



