やっぱり気分が悪く皆からも顔色が悪いと言われ帰って来た。

玄関の鍵を開けていると辰次郎さんが部屋から出てきた。

「今帰りか?」

「うん…ちょっと具合悪くて…早退してきたの…じゃー」と言って部屋に入った。

後ろで「大丈夫か?」と言う辰次郎さんの声が聞こえたような気がした。



部屋に入るとまた気分が悪くなりトイレに駆け込んだ。

ベットに横になり体温計を脇に挟む。


「37.2 微熱か…風邪でも引いたかな?」

前に辰次郎さんが買って来てくれた風邪薬があったなぁと思い引き出しを開け薬を手にする。

冷蔵庫からミネラルウォーターを出し薬を口に入れようとした時ふっと頭を過るものがあった。

まさか……

私は薬を飲むのをやめベットに横になった。



翌朝、宏海に病院に行ってから出社すると連絡を入れた。



病院に行き受付を済ませると問診票に記入する。

最後の生理は11月末だった。

もともと生理不順だったから気にもしていなかったが……

辰次郎さんにおすそ分けを貰うようになってから生理不順は良くなっていた。

もし……そうだったらどうしよう…



尿検査と血液検査して診察の順番を待つ。

待合室にはお腹の大きな人や生まれて間もない赤ちゃんを抱いた人、夫婦だろうか若い男女が嬉しそうに出産準備の雑誌を見ている。


私も普通に恋愛して普通に妊娠ていたらあんなふうに喜んだだろうな……

「鈴木さん、鈴木美貴野さん」

「はい…」

「3番診察室へどうぞ」

3番診察室に入ると若い看護師さんが「下着を外し内診台に上がって下さい」と言う。

私は内診台に上がるとよほど顔が強張って居たのだろう。

若い看護師さんは「そんなに緊張しなくても大丈夫てすよ」と微笑んでくれる。



「おめでとうございます。11週に入ったところですね」と先生は告げる。

「………」

「鈴木さん食事取れていますか?貧血もあるようですから気をつけてください。今日は点滴をしますが、赤ちゃんの為にも食事で栄養をとって下さいね」

「…はい……」


社に電話をし今日は出社しないと連絡を入れた後点滴を受けた。