「歩、お前なぁっ…!」


「……歩?」



銀髪が何かを言おうとしたとき、男にしては高めの声が俺を呼んだ。


ハッとして振り返ると、榊が身を起こしてこちらを見ていた。


澄んだ瞳で俺を見つめ、惚けた表情をする榊。



「どうしたの?…ケンカしてるの?」


「真浩……」


「諒真さん、ケンカはダメだよ〜。あ、歩、元気になったんだね!良かった!」



俺に向けられる、屈託のない笑み。


何故か急に心苦しくなって、視線を振り払うように目をそらした。



「…榊」


「なぁに?」


「…迷惑、なんだよ」



そう言った瞬間、榊の顔から笑みが消えた。


榊に、こんなことを言うべきでは無いのかもしれない。


……でも、言葉が勝手に出てくる。



「この銀髪と組んで、俺を振り回して。どんだけ迷惑してたと思ってんだ」


「え…っと……ごめん。でも僕、」


「さぞ楽しかっただろうな、好き放題やりやがって。でも、俺をお前らのゲームの駒だと思ったら大間違いだぞ」


「違っ……そんなこと…!待ってよ歩!!」



榊は立ち上がって俺に近づこうとするが、睨んでそれを制した。



「……これ以上やりたいなら、他あたれ。
俺は降りる。じゃあな」



呆然として動けない様子の銀髪を押しのけて、ドアを開ける。