榊の家のだだっ広い庭に出て、ボキボキと指を鳴らす。


まだ腰は治ってないけど、コンディションはそれなりに万全。


一方、銀髪はというと。



「おい真浩……コイツ意外とやる気だけど、本気でやっていいか?」


「んー。いいんじゃないかな、歩だし」


「…俺、手加減出来ないぞ?」


「もし歩が瀕死になったら、僕が諒真さんを殴って止めるから大丈夫」


「おぅ、任せた」



……何で俺が負けること前提なんだよ。


こんな顔だけの女好きにやられるわけ無いっつの。


まぁ…向こうが油断してる分、こっちはやりやすいから助かるんだけどな。



「うーっし、歩。やんぞ」



軽く腕を回し、緊張した雰囲気が全く無い銀髪。


その余裕そうな顔…すぐにぶっ潰してやる。



「馴れ馴れしく名前呼ぶんじゃねーよ、銀髪」


「まーた銀髪呼ばわりかよ。いいか?もう一度言うが、俺は諒真だ」


「どうでもいい。興味無い」


「あぁ、そうだな。お前が興味あんのは、俺の力……だっけか」



そう言うと、銀髪は妖しく口角を上げた。



「──かかってこいよ」



その言葉を合図に、俺は地面を蹴った。



10mほど先にいる銀髪に向かって一直線に走り、拳を握る。


俺が全速力で走っているというのに、ただ突っ立っている銀髪の目は少し笑っている。


……一発で終わらせてやる。


そう決め、銀髪の左頬めがけて拳を繰り出した。