染めちまったもんは仕方ねーか...。
「おい、ただでさえ時間に遅れてんだ。
こんなことしてる場合じゃない。
銀髪、例のアレは持ってきたか?」
「おぅよ!」
ニッと笑い、銀髪はキーを取り出した。
「倉庫の近くに停めてあるぞ」
「よし。なら行くか」
「んじゃあ、俺はここでおさらばだな」
銀髪は一足先に倉庫へ行き、色々準備する計画だ。
つまり俺と真浩、2人で行くことになる。
銀髪からキーを受け取り、それをポケットにしまった。
ヘッドホンを首にかけ、パーカーのフードを被って歩き出す。
足になじむスニーカーがジャリジャリと音を立てる。
「ねぇ歩、何で今日もヘッドホンつけてるの?」
使わないじゃん、と隣に並んだ真浩が言ってくる。
「...使う使わねーじゃねぇんだよ。
これは俺のスタイルだから持ってるだけ」
「何それ。自己満?」
「まぁ……そうだな」
イヤミのようにも聞こえたが気にしない。
昔からずっとつけてるから、無いと落ち着かねぇ...なんて言っても分かんねーだろうし。
「ふぅん。
なんかさ、歩って意外と格好気にするよね」
「してるからこの髪色なんだろ」
「歩の黒髪見てみたいなぁ」
黒髪、か……。
もう黒髪の時の自分なんか忘れたな。
「...いつか、な」
「え、いつかっていつ?明日?」
「アホか。10年くらい後だよ」
「10年後……25歳になってもまだ赤髪だったら笑えるよね」
「どうせお前は緑のままだろ」
「歩が黒にしたら僕は金にしようかな〜」
「似合わねぇからやめとけ」
そんなことを話しているうちに、倉庫前に着いた。


