恋色シンフォニー

「ごちそうさまでした。おいしかった!」
「それはよかった」
「私、洗い物する。させてください」
「じゃあ、よろしく。僕、着替えてくるから」
三神くんは階段を上がっていった。

キッチンはきれいに保たれている。
家事力、高いな。
これは気合いを入れて皿洗いせねば。


お皿を拭いて片付けていると、庭の方から人の話し声が近づいてきた。
「大丈夫、あいつ練習室にいると気づかないから、こっちから入るんだよ」
男性の声。
「いやでも」
女性の声。

「圭太郎、入るぞ〜」

ダイニングのサッシから人が入ってきた。

あ。
コンサートで隣だったイケメン。
と、
指揮者の早瀬マリさん。

「あ。」

向こうもこちらに気づき、対面式のキッチン越しに、お互い固まる。

「いやこれは失礼」
「いえ、違うんです。私はただの会社の同僚で……」
ゆうべ酔い潰れて泊めてもらいました。
と恥をしのんで続けようとしたとき、

「龍之介っ、勝手に人の家に入ってくるなって、いつも言ってるだろ!」

と叫びながら、三神くんがだだだっと階段を駆け下りてきた。