「お待たせっ!ーーっわッ‼︎」
どうしよ、つまずいたっ!
痛みを覚悟して目を瞑る。
でも傷みはこなくて、
「やると思った。
下駄なんだから気をつけろ。」
降ってきたのは少し怒った奏のことばと、ぎゅっとされてる温もりでした。
「楽しみで、つい。
ありがとう。」
「可愛い格好、台無しになるとこだったぞ。」
か、可愛い?
さらりと言われたけれど、嬉しすぎる。
ばっと顔を上げると視界に入ってくる、奏の浴衣姿。
グレー色の浴衣に紺の帯。
シンプルだけどそれが奏にすごく合ってて…
「か、カッコいい…。」
「ばか、見惚れるな。」
「な、いいじゃん見惚れてもっ。
奏だって少しぐらいは照れてよね!」
「照れている間にお前に何かあったら守れねぇだろうが。
余計な事考える前にしっかり歩け。」
「うぅ。」
最上級にかっこいい言葉をさらりと言うなっつーの!
私ばっかり振り回されて照れまくってるじゃんか。
「お前が照れてる姿は可愛いからいいんだ。
もっと照れろ。」
「なんじゃそりゃ。」
「あー、お前の浴衣姿、他の奴らに見せたくねぇ。
今日本当にあいつらと行くのか?」
「奏が約束してたんじゃん。」
「仕方ねぇだろ、あいつら、俺たちが行くというまで離さなかっただろうし。」
「た、たしかに。」
「いいか、純怜、絶対俺のそばから離れるな。いや、手を離すな。お前の事だから、ひとりでいたらナンパされまくるぞ。」
「はぁ?私が?ないない。
いくら浴衣で少しは可愛くなったって、それはないなi」
「いいな。」
「はい。」
言葉を遮ってまで言う奏に、頷くしかなかった。

