ということで、電車おりて、駅前のデパートに入ってる、大型の楽器店にきた、
「なぁ、30秒で弾けて、それなりに聞き応えある曲なんか知らね?」
のはいいけど無茶苦茶なこと言いだした奏くん。
「そんな曲、あったらコッチが知りたいわ。」
「だよな。
まったく、神父さん、無茶言い過ぎなんだよな。」
「どういうこと?」
「今度、合唱団の保護者向けに、発表会するらしいんだが、まぁ、授業参観的な?
それで、俺に何か一曲弾いてくれって言われたんだよな、一昨日。
それは全然いいんだが、むしろ有難いんだが、時間が30秒とか……。」
「む、無茶苦茶。」
「あぁ。だから、お前に相談したところだ。
やっぱ勝手に編曲するしかねぇかな。」
「うん、そだね。
それが一番いいと思うよ。
それがダメなら、店員さんに聞いてみる、とか?」
「正直な話、店員が俺らより知ってると思うか…?」
「…。」
「やっぱ、編曲するわ。」
「せ、先生とか、学校の。」
「俺らより知ってると思うか…?」
「…編曲、手伝います。」
「あぁ、助かる。
とりあえず、元にする曲探すから意見聞かせてくれ。」
「もちろんですとも。」
どんな雰囲気なのかな、その発表会って。
奏に聞こうとした時、
「…あの〜、違ったらすみません。
神峰 奏様と、水姫 純怜様でいらっしゃいますか?」
話しかけてきた店員さん。
なんだろう。
そう思って、
「はい、そうですが…?」
答えたんだけど。
「わぁ、やっぱり。
突然話しかけさせていただいた無礼、お許しください。
その上、大変不躾で申し訳ないのですが、ここに、サインして頂けませんでしょうか?
レッスンに通ってくる子達の励みになればと思いまして、飾らせていただきたいのですが…。」