「ねー、直人ー」
「なんだ」
早帰りだった沁音がニヤニヤしながら、俺を見る。
「それ、どういう心境の変化?」
指差す先は俺の顔。
「………うるせー黙ってろ」
「あははっ、愛ちゃん襲っちゃダメだよー」
「余計なお世話だ、勉強してろ」
階段を上がり、肘と足で器用にドアを開ける。
「はるなぁ」
そこには、ベッドに体育座りして俺を見上げる生田。
「………何してんの」
「クソとか、言ってごめん」
「は?」
「あたしがそんなこと言ったから、出てったのかと」
「あほじゃねーの。クソとか前からお前言ってんだろ。そんなんで怒りませんー、何年いると思ってるの」
ははっと笑い、テーブルにジュースを置く。
「良かった………」
「つかさ、思ったんだけど生田っていつから俺んとこ好きなの」
「え?今聞くそれ!」
体育座りしてんのに、もっと小さく丸まる生田。
「小4のとき、榛名が転校してきて、その1ヶ月後ぐらいにあたし階段から落ちそうになって。それ、腕引っ張って助けてくれたのが榛名だったの。それで、好きになった」
そういや、そんなこともあったな。
危ないと思ってめっちゃ必死で腕掴んだ。
小4の俺には人一人持ち上げる力なんてなかったけど、勢いで必死で引っ張った。
そしたら、涙目でありがとうって言われた。

