10年越しの初恋に2度めの終止符を打った朝、私はドン・ファンと出会った。
……まだ中学生、それも中学1年だというのに、彼は異様な色気を全身から発散していた。



朝7時前に、女子大の寮に帰り着いた。
ドアを開けようと手を伸ばすと、力を入れる前にドアが開いた。

「あ!ごめん!」
へ?何で男がいるの?

驚いて目の前の人を見た。
男と言うよりは、男の子?……ちょうど中間ぐらいかな。
どうしてココにいるの?

唖然としてる私に、彼はニヤリと笑った。
妙に色気のある目にゾクッとした。
「始業式に朝帰り?何?ふられたん?喧嘩?せっかくの美人が台無しやで。目ぇ細くなって。」

なっ!?
ほぼ正確に言い当てられて、私は恥ずかしさで卒倒しそうになった。

「まあでも、そのほうがええわ。エロ校長に目ぇ付けられたら、厄介やしな。今日はおとなしくしとき。」
エロ校長?
てか、君、誰?

「君、どこの学生?何で女子寮にいたの。」
私の質問に肩をすくめて、彼は歩き出した。

「バイバイ。また後で。」
……後で、って。

もしかして、もしかしなくても、これからお世話になる学校の生徒?
始業式って言ってた。

……てゆーか!
あの子は、女子大生寮から朝帰りってことなの!?
おーい???


まだろくな荷物も運び込んでいないガランとした自室でスーツに着替えて身支度を整えた。
まぶたが腫れて、確かに不細工だわ。
……ま、いいか。


8時過ぎに寮を出ると、地下鉄で勤務地へと向かった。
理事長、校長、教頭、教職員に一通り挨拶に回ってから保健室へ入った。

薬剤師の和田先生に挨拶してると、すぐにまた呼びだされ、礼拝堂へと引っ張られた。
中学1年年生から高校3年生までの全生徒に紹介されて、やっと解放された。


「お疲れ様。……目、どうしたの?夕べ、お酒でも飲み過ぎた?」
和田先生がお茶を入れてくれながら、そう聞いてきた。

「むくんじゃったみたいです。ひどい顔ですよね。恥ずかしいです。ありがとうございます。いただきます。」
「どうぞ。……でもいいタイミングだったわよ。あなた、綺麗だから心配してたの。校長先生がよからぬ想いを抱くんじゃないか、って。」

和田先生の言葉に驚いて、私はお茶にむせてしまった。
「大丈夫?」
慌てて和田先生が、背中をさすってくださった。

「大丈夫です。ありがとうございます。あの、校長ってそんなに……」

どう聞こうか言葉に困っていると、今朝の男の子がやってきた。