はなって



思わず鼻歌が溢れそうになる。

今日は待ちに待った測定の日。
冬に健康診断があるのかって?ノンノン、そんなわけないじゃない。

「ご機嫌ね」

学食でわたしの前に座るリンちゃんは呆れ顔だ。
そりゃそうだ。約束を取り付けた日から、わたしはテンションMAX、脳内お花畑状態なのだ。


「まだかなー、まだかなー」

うきうきと手元にある道具をみる。

必要なものは、メジャー、分度器、そして。

「よーハナコー」

"艶やか"な鼻。

「ハナコじゃねっつの」
「うお、今日もうまそう。いただきまーす。」

普段なら阻止するところ。でも、今日の私は心が広いのだ。なんたって測れるのだ。

冬馬くんの、"艶やか"な鼻を。



「はーい、じゃあ目を瞑って」

ぎゅっと素直に目を閉じた冬馬くんに、よしよしといいながら分度器を鼻に当てる。

うわあ。すごいすごい。
"艶やか"な鼻に触ってるんだと思うと体がふわふわする。気をつけなければ宇宙まで飛んでいきそうだ。



「ハナコはさ」

「なにー」

「鼻と俺どっちが好きなのって聞かれたらどうするの」

「うーん、鼻かなぁ。鼻子だし」

「じゃあ、春子がさ」

「うん」

「鼻と俺どっちが好きなのって聞かれたらどうするの」

「うーん」

冬馬くんと鼻、
冬馬くんと鼻、
冬馬くんと鼻。





「…鼻かな」





ちゃんちゃん!