「…俺が、蓬と出会ったのはあの子は2歳なんです。…それから、今までずっとあの子の父親として育ててきた」

「恩着せがましく…」

「大宮さん、蓬は、あなたのことを知らないんです。あなたも分かっているでしょう?
 14年間、蓬はずっと俺と妻の子どもとして生きてきた。それを、あなたは否定してるんだ。
 蓬に、お前は晴野蓬じゃないと、あの子の14年間を否定していることが分かりませんか」

 虚を突かれたような顔になった大宮さんは、ちょっと待ってくれと頭を抱える。

「蓬は、あなた方の馴れ初めを聞いて、どう思ったと思いますか?理由があったから、離れるしかなかった。蓬を手放したのはただの事故で、お前の父親は俺だと論外に…」

「だから、待ってくれ」

「蓬は、混乱したまま、母親からだという贈り物を突き出されたんです。今のあなたと同じように」

 大宮さんは、蓬の言動を思い出しているのか、大きくため息をついた。

 分かってくれたんだろうか。大宮さんに覇気は消えた。