「そこまで指図されるいわれはないな」

「…蓬が、どれだけ傷ついたのか、分からないんですか。あの子に、あなた方を許す余裕はまだないんです」

 あの騒動の後、蓬は元気に振舞ってはいたが、時々急に表情がなくなることが増えた。
 そして、部屋にこもる時間がずっと増えている。この前の1件後、更にだ。

 部屋から連れ出すように、桃にも、とも、みあにも言ってある。
 でも、目を離せばどこかに行きそうな危うさを持ち始めたのは確実にこの前の1件後だ。

「何が言いたい」

「…あの子の父親は、俺なんです。あなたじゃない」

「ふざけるな!確かに、育ての親は晴野さんで間違いない。だが、父親は俺だ!あの子の父親は俺なんだ!!」

 この人も、被害者なのかもしれない。

 でも、大人の都合で振り回された蓬が、やっぱり1番の被害者だ。

 この人じゃない。この人は血の繋がりを信じすぎている。