あの日から晴野くんは図書室に来ない。
僕があんなことを言ったからだろうか。だけど、本心だ。
話しかけてほしくなかった。深く踏み込んでほしくなかった。
…本当は、晴野くんに聞かれるのが怖かったんだ。将来の夢を。
自分では聞いたくせに、本当は全然そんな大層なものはなくて、ただ漠然といい高校、いい大学に行くことだけを目指してる。
その先に何があるのかなんて全然わからない。
今頑張れば、将来いい会社に入れるかもしれない。いいところに入って、いい暮らしをして…。結局、その“いい”の基準はよく分からない。
よく、分からないんだ。
テストまであと1日に迫ったこの日。
いつも通り図書室に向かう。ドアを開けたところで、思わず目を疑った。
「…晴野くん」
「あ、悪いな颯人。勝手に休んで」
「い、いや。別に…」
てっきり、あの日僕が彼を怒らせたんだとばかり思っていたから。まさかまた来るなんて思ってなかった。


