部屋の机の上にはご丁寧にココアが入ったカップが2つ。お菓子までついています。

 こうちゃん…あれだけで何となく察したんでしょうか…。

 遥人くんは困ったように立ち尽くしていて、そっと苦笑を浮かべる。

「喋りましょうか。会議終わるまで」

「え、あ…はい」

 ギスギスした空気のまま、ソファに向かい合って座る。

 カップを両手包み込んで、口をつける。あ、流石こうちゃんベストな濃さです。

 ふと視線を遥人くんに向けると、遥人くんもカップを両手で包み込んでいて、バチッと視線が合う。

「…ッあはは」

「え!?そこで笑うんですか!?」

「いや、まさか同じ格好してるなんて思わなくて…」

「それは俺のセリフですよ!?」

 また視線が合って、今度は2人同時に吹き出す。

 あ~あ、なに緊張してたんだろ。相手はあの遥人くんなのに。

「遥人くん、私が姉だって知ってたんですか?」

「…いや、知りませんでした。だから、すっげぇ、びっくりした」

「…嫌、だった?」

「ッ!?嫌じゃないです!!むしろ光栄って言うか…」

「何それ、変なの」

 慌てふためく遥人くんがかわいくて、思わず笑っちゃう。

 遥人くんは急に自信を失ったように目じりを下げる。