1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)


 それにしても、さっきから住宅街が続いているだけですね。なんだか静かな町です。

 駅から15分ほど歩いたでしょうか。

 父親が足を止めたのは少し年季の入った2階建てのアパートでした。あきくんの借りているアパートの方がこぎれいな感じがします。

「ここの2階だ」

「そうですか…」

 母親に会うだけではなく、弟に会うと思うと急に緊張してくる。はじめから弟がいることを教えてくれていれば…。

 少し深呼吸をして、先に外階段を上りだした父親の後を追いかける。

 階段を上って、左隅から1つ隣の部屋の前に止まる。

 ここに、母親がいるんだって思うとよく分からない気持ちになる。チャイムに手を伸ばした手が、不意に聞こえてきた怒鳴り声に手が止まる。

「んなの知らねぇよ!!俺には関係ない!!」

「……と、………」

「勝手にしろよ!俺はいらないんだろ!!」

 どこかで聞き覚えのある声。でも、記憶にある穏やかさはなくて、刺々しい言葉なんかやっぱり似合わない声。

 父親に肩を引かれて後ろに下がる。と、同時に部屋のドアが乱暴に開かれた。