「10回目……?」


「そうだ。この電車を繰り返すたびにお前は最後まで残り、そして今日のように自分のいなくなった世界を見てきている。そしてすべて、忘れている」


「そんな……!」


目の前が真っ暗になる。


グラグラと世界が歪んでいるような感じがして、気持ちが悪い。


「そろそろ時間だ。残り、29」


車掌がそう言い、フッと姿を消した。


「まっ……!」


引き止めようとした手は空を掴み、そして俺の意識は暗闇へと引き込まれていったのだった……。