次に目を開けた時、俺は小さな家の前に立っていた。


塀には蔦が絡まり壁の色は薄汚れ、窓は所々割れているのが見えた。


まるで廃墟のようなその家に俺は一瞬たじろいた。


愛奈の顔を思い浮かべてこんな家が出てくるなんて思っていなかった。


俺は玄関まで来て立ち止まり、周囲を見回した。


玄関前には割れたプランターがあり、乾ききった土の上に枯れた花が力なく横たわっている。


俺は少し深呼吸をして玄関を入った。


玄関先には靴が散乱していて、俺が人間だったら足の踏み場もない状態だったろう。


ヒールの高い婦人の靴や、汚れてボロボロになった小さな靴がある中、紳士物の靴だけがどこにも見当たらなかった。


玄関を通り過ぎた細い廊下には段ボールやゴミ袋が山積みにされていて、まるでゴミ屋敷のような状態だ。


ここが愛奈の住んでいた家か……。


とてもいい環境とは言えなかったようで、俺は軽く顔をしかめた。


そして、廊下の突き当たりのドアを通り抜ける。


その瞬間、思わず「うわっ!」と、声をあげていた。