俺を見下ろした車掌はこう言った。


「現実の世界を見てみるか?」


その問いかけに、俺は言葉を失う。


現実の世界……。


それは俺がいなくなた世界の事を言っているのだろう。


それを見れば償う理由がわかる。


でも、こういう聞き方をするということは、またひどい思いをさせられるのかもしれない。


心が張裂け、何度も死んだような思いをするのかもしれない。


「俺は……」


ゴクリと唾を飲み込む。


ここですべてを見ても、明日にはきっと忘れているのだろう。


記憶は消されまた自分からこの電車に乗り込んでしまうんだろう。


それでも……。


「俺は見てみたい」


そう答えたのだった。