愛されだけど極道さんですよ?

「それならいいんですけど」


 安心したようなそうでもないような。
 よくわからない気持ちになりつつ、「あ、そうだ」と自分の鞄をごそごそして完全私物の本を取り出した。


「まだ図書室には入ってないんですけどね。榊原くんがいつも読んでる作家さんの新刊出たんです、これなんですけど読みました?」


 今日読み終えたばかりの本の表紙を見せると、榊原くんはどこか神妙な表情で「いや、読んでない」と首を横に振る。


 私はそれが嬉しくて、自然と頬を緩ませながら「じゃあ、はい」と手にしていた本を差し出した。

 自分の好きなものを共有できるのは、とても楽しいのだ。


「これ貸します。返してもらうのはいつでもいいので、その代わりに榊原くんの好きな人がいたら教えて欲しいです」


 もちろん作家さんという意味で言ったはずだった。
 それなのに、次の瞬間本を手にしていた私の手を、榊原くんがぎゅうと掴んで、真剣な表情でこう言った。


「お前が好きだ」


 ――卯野、俺と付き合ってほしい。