愛されだけど極道さんですよ?

「そのつもりは、ない」
「?貸出カードならすぐに作れますけど」


 こんなにいつも通ってくれているのだから、本が好きなんだろうし。

 そう考えてカウンターの隅にある、真新しい貸出カードを取り出して見せる。
 けれど榊原くんは「……いや、そうじゃなくて」と妙に歯切れの悪い口調で言った。


「とりあえず、貸し出しはいらない」
「……そう?」


 当人がそう言っているので、私は渋々カードを片づける。
 久々にバーコードリーダーをぴっとできると思ったのに。


 でも思っていた以上に、榊原くんは普通に話せる人みたいだ。
 そのことに気が緩んで「今急いでる?」と尋ねてみた。


「……別に」
「ならよかった。私同じ一年生の卯野です、いっつも来てくれてありがとう。榊原くんが来てくれなかったら、私毎回ひとりになるから」


 彼には関係ないことかもしれないが、確かに嬉しいことだったのでお礼を言っておいた。
 すると榊原くんは何か堪えるように口を噤む。


 うん?
 でもまあ、話は続けても大丈夫?だと思う。


「榊原くんが読んでいた本なんですけどね、私も好きな作家さんなんです。それでなんだか嬉しくなっちゃって、声かけたんですけど……もしかして迷惑?」
「それはない」


 なぜだか瞬時に、真顔で否定された。

 ……なんだかおもしろいな、榊原くん。
 よくわからなくて。