愛されだけど極道さんですよ?


 あまり良い反応ではなかったけど、舌打ちをされたり睨まれたりしたわけではなかった。


 それだけで私のイメージは少し変わって、この常連さんにもう少し話しかけてみようという気持ちになった。


 だってこの場所はこんなにたくさん本があるのに。
 本当にだれも、榊原くん以外に来てくれないのだ。
 やっぱり寂しい。


 それに榊原くんの読んでいる本はいつも私の読む本と重なっていて、きっと話題も合うんじゃないかなと想像するだけで面白かった。


 これからも続けていく図書当番なんだし、ちょっとくらい楽しみがあってもいいはずだ。


 そう考えて、夕日も差し始めた下校時刻。
 帰ろうと私がいるカウンターの前を通り過ぎようとした榊原くんに、もう一度「ねえ」と声をかけてみた。


 舌打ち、睨みが帰って来た時は退散するつもりだったけれど、意外にも彼は少し驚いたように目を見開けた。


 これはいけそうな予感。


「いつも本読みに来てるけど、借りて行かないんですか?」


 前々から気になっていたことを尋ねてみる。
 すると彼は少し間を空けてから「いや」と首を横に振る。