榊原くんはいつでも無言でやって来て、無言で図書室から出て行く。
あまり利用者のいない図書室だったので、冬休みが明けた頃にはすっかり常連さんだと私も嬉しくなっていた。
相変わらず言葉を交わしたことはないけれど、こんなに静かに本を読んでいる人なんだから、噂のように恐いだけの人じゃないかもしれない。
そう少しだけううんと考えて、私は期末試験も終わった頃にひとつやってみることにした。
その日もいつものように、無言の仏頂面で榊原くんはやって来た。
せっかく恰好いい顔をしているのにと思いつつ「こんにちは」と初めて声をかけてみた。
スルーされるかもとあまり期待もしていなかったけど。
榊原くんは扉を開けた姿勢のまま、固まってしまったようにこちらを見た。
「……?」
これはどういう反応だろう。
まさか驚かれている、とか?
だとしたら普段の噂とは少しイメージが違う。
そう私が首をかしげていると、榊原くんは眉間にしわをよせて「ああ」と言ってからようやく扉を閉めた。
