「本当にありがとう、柏木くん」


「えっ?」


急にこんなこと言ったから、変に思われてしまったかも。


「ごめん、やっぱりなんでもない」


忘れて、と付け加えると、柏木くんは首を横に振った。


「よく分からないけど、永瀬さんに感謝されるのは、本当に嬉しいよ。俺からもありがとう」


メガネの奥の優しい眼差しが、きれいに私を捉える。


その瞳をしばらく眺めていたら、見つめあっていることに気付いて、恥ずかしくなって、2人で照れながら笑った。


彼氏彼女ではないけど、こんなのも、なんだか楽しいって思えるのは、キミが隣にいるからなのかもしれない。


なんて、2人の真ん中ですやすやと眠るシオを見てそう思った。