ここまで思い出して思考が止まる。
……あれ?
私、課長とキスしたの? キスしたのか?

というか、何を話してるんだ。
私、何を話してるんだ。
一生、課長に顔向けできないほどの失態ぶりだ。
ここは、キスするところって漫画の読みすぎか!
そしてどうしてそれを課長に伝える必要がある!
しかも可愛い子にしか許されない誘い文句!
あの日の自分を土にでも埋めたい。

しかも課長、甘いの嫌いなのに、クッキーなんて買ってしまったじゃないか。
なんでこのタイミングで思い出すかな。最悪だ。

急に喉に何も通らなくなる。
どうしよう。だけどそれとこれとは別なわけであって、謝罪はしないといけない。
あの日の自分に墓標を建てよう。
腹をくくって、会社に戻り課長を誘った。

「あの課長」
「なんだよ」
「今日、時間ありますか」
「時間?」
「この間のお詫びに食事でもどうかと思って」
「食事?」と言った後、めんどくせーなと心の声が漏れた。
「まあ、いいけど。21時過ぎるかも」
と、行きたい店を私に伝えると課長は行ってしまった。

やばい。唇がん見するところだった。
男のくせに荒れてなくて、艶のいい唇だったな。
って、なに品定めしてるんだ。
朝のあの対応でわかるはずだ。
実際ひとりで寝ていたわけだし課長に「バカ」と言われ、放置されたに違いない。