雨上がりの夜は、薔薇の香りがいつもより芳しい。

私たちは、アーチに咲いた薔薇の中を歩いていた。


「廃線モノレールを薔薇のアーチにするなんて無理があると思ったけど・・・」

「ああ、これはこれでアリなんじゃないかな」

私は少し前を歩く彼に話しかけ、彼はこちらを振り向かずに答えた。

何年か前に異常気象で鎌倉モノレールは運行休止になった。当時の市長は常々鎌倉の風景にモノレールはそぐわないと公言していたため、モノレールを廃線にした。

そこが今では薔薇のアーチとなり、空中薔薇庭園として市民の憩いの場となっている。


薔薇の下で告白したらうまくいく。
ここでキスしたら幸せになれる。

そんな噂話が広がるのに、時間はかからなかった。

そして、そんな噂話に全力で乗っかる私。
サークルが終わると、彼に試験のヤマを教えてほしいとか言って薔薇園まで無理矢理引っ張ってきた。


告白→キスの流れに持っていくにはどうしたらいいのか。少ない恋愛経験を総動員して頭の中はフル稼働している。

手とか、繋いじゃおうか・・・


然り気無く手を触れられる距離まで近付こうとした時、大振りな薔薇の枝が揺れた。


微かな鳴き声と共に、猫が現れた。

彼は猫を見ると芝生の地面に片膝をつき、その猫の背中を撫でた。
横顔の唇が動いているのに、私には何も聞こえない。



猫が、こちらを見た。

『失恋する覚悟はできているんでしょうね?』

そう、言われている気がした。



~告白~
フられる覚悟なら、とっくにできている