試合が開始された。この日は軽量級からの試合だ。

 ライトウェルター級の康平はやや重いクラスで、彼の試合は十一番目だ。少し時間があった。彼は軽く身体を動きながら、同じ学校の後輩や同級生を応援した。

 高校ボクシングの試合は短い。一試合二分三ラウンドで行われる。ラウンド間に一分の休憩はあるが、判定であっても約十分で終了する。

 この日はTKOで終了する試合が多かった。試合はどんどん進んでいった。


 第十試合が始まった。これが終われば、赤コーナー側で試合をする康平は、その後方にある折り畳み式の椅子に座った。

 この試合、永山高校の部員は出ていなかった。

 康平は試合を観ずに目を閉じていた。試合を観ると、余計な事を考えてしまい、緊張が増すような気がするからだ。


 試合は第二ラウンドKOで決着がついた。

 康平は目を開け、勢いよく立ち上がった。