え? ちょっとどうしたの?

近付いて来て、私の腕を掴む須賀くんに威圧感すら感じる。


なんで? 怒ってるの?

陽奈さん、何か気に入らないことでも言った?


腕を掴んだまま、黙って階段を上って行く須賀くんは、何故だか切なそうな顔を浮かべている。

どうして? 陽奈さん、嬉しそうにしてたじゃない。

家族を喜ばせるためのニセ彼女じゃなかったの?


部屋のドアがバタンと閉まると、須賀くんはホっとしたように溜め息を吐いた。

さっきまでの辛そうな表情が、弱々しい作り笑顔に変わる。


「ごめん。何でもないから。」

「うそ。」

「本当に何でもないから。」

「..........。」

「マジで、平気だから。」

「.......わかった。」


そう言って微笑まれたら、それ以上は何も言えない。

聞いていいのかどうかも、私にはわからないし..........


須賀くんは、その後すぐいつもの調子に戻ったけど、いろんな疑問が頭の中をグルグル回り続けて、せっかく観せてくれたDVDの映画の内容がまったく入って来ない。


確か、須賀くんの様子がおかしくなったのは、陽奈さんがニセ彼女の私を「愛されてるね」ってからかった後だった。

だけど、そんなに嫌な気持ちになるような言い方じゃなかったし、しつこくもなかったと思うんだけどな。