ディアナはそわそわと落ち着かなかった。
館に戻ったフランツ皇子にまだ会えていないからだ。

館についた皇子は無事なように見えたけれど
もしかしたら戦場で傷を負っているかもしれない。
そこまでは遠目では確認できなかった。
手を挙げて応えてくれた皇子に、すぐに駆け付けたかった。
すぐに降りて行って無事を確かめたいのに、アイザックが降りてはだめだというのだった。
今は興奮している兵士たちが多いから、降りない方がいいというアイザックの助言だった。

ひとまずアイザックだけが皇子の様子をみてくる、といって扉の鍵を閉めて行ってしまった!





落ち着こう、ふー、、っとわざと大きく息を吐いてベッドに腰を掛けた。


ぁー、だめだ。。
また立ち上がる。


やっぱり降りたい!


ディアナは扉に手を掛けた。

かちゃり。

「え?」

扉は開いた。

鍵、開いてるじゃない??


そう思ったとたん、
ぐっと扉が引かれ、取っ手に手を掛けたままだったディアナは扉の外に思いきり引っ張られた。

どしっと何かにぶつかる。
「きゃっ!」

ぎゅっと抱きしめられた。
その香りにどきっとした。

「何をしている?」


笑みを含んだフランツの声が響いた。

「フランツ皇子っ!」
がばっと顔を起こして見上げる。
うす青い瞳がディアナを見つめて微笑んでいる。
見たかった笑顔にやっと会えて、鼻の奥がつんとしてきた。涙が出そうにうれしかった。
フランツがディアナをぎゅーっと抱きしめる。
胸に抱え、扉をそっと閉めた。


愛おしそうにディアナの髪をなでるフランツ。
ディアナの黒い瞳がうっすら潤んでいる。
「きみが勝利をもたらしてくれた。救いだというのは本当だったようだ。」
フランツは小さく首を振ってみせた。表情がやさしい。
ディアナはほほえみを浮かべている。
「私は何も。ただあなたのそばに居たくて、ここに居ただけ。全部この首飾りのおかげみたい。」
胸元の首飾りに視線を落とした。
そっとそれに触れる。

フランツもそれを見つめる。
「ああ、そうかもしれない。」
すっと納得できた。
「きみが無事でよかった。」
心の底からそう思った。
「皇子は?怪我はしてない??」
ディアナが皇子の胸や腕に触れる。

そんなディアナが可愛くて堪らない。
フランツはさらさらとその金色の髪を彼女に落とし、彼女の額に、頬に、鼻に、そっと口づけをした。

「ぁ・・、フランツっ。」
甘い吐息がもれる。

「だめだよ、そんなに触っちゃ。抱きしめたくなってしまう。」
甘い花の香りが広がる。
「もう手遅れかも。」

フランツはディアナをやさしく抱きしめ、
首飾りが飾る胸元にも口づけをした。

「わたしのそばに居てほしい。」
そっとくちびるをつけた胸元に指を這わせる。

「救いの役目は終わった。これからは私の傍に、私と共に。ずっと。愛している。。ディアナ。。」

フランツの熱いくちびるがディアナを求める・・

小さな白いディアナの身体がフランツによって花開かれる・・

甘い吐息がふたりを包み込む・・


ディアナは身体いっぱいによろこびを感じていた・・

フランツも温かな安らぎを感じていた。