保健室に向かう途中、昨日の慶太くんの言葉が蘇った。



"本当、芙祐ちゃんと弥生くんって仲良いよね"



やばいかな。
ヤヨとこうやって接するの。
嫌かな?慶太くん。




「頭いてぇ….」


「ゆっくり歩こっか」



でもこんな病人ほっとけないよ。
ヤヨでもヤヨじゃなくても、こんな状況で知らんぷりするような悪人じゃないよ、あたし。


藍でも、リコでも、もちろん慶太くんでも、山田でも運ぶよ、保健室。
寒がっていれば毛布ぐるぐるオブジェにするし。


大丈夫。これは常識の範囲内。



「もう授業始まるだろ。一人で行けるから」


「あぁもう、そっちじゃないよ、保健室」



だめだ、このひと。
気が張れなくなってるね。


英文科のある棟の1階。
やっと保健室についた。



「失礼しまーす。せんせー」



しぃーん。
誰もいない。



「体温計どこだろ。あ、発見」



ヤヨに渡して検温中。



「先生すぐ戻ってくるかな?」


「くるだろ。もう大丈夫だから、ありがとな」



教室に戻っていいよって促すヤヨだけど。


「先生が来るまでいるよ。心細いでしょ、こんなに具合悪いのに」



熱でぼーっとしてる。潤んだ目。
人間誰しも震える子羊ちゃんのことなんか、ほっとけないよ。