あの日、泣くだけ泣いた私を知っているのは。

授業をすっぽかした私を心配して、途中で抜けて、校舎中を駆け回って探してくれた楓。

予防接種をしに行ったから遅刻したんだと、後々知った

“青井 卓巳”

ことたっくんのみ。

たっくんと颯太と優汰。

塾もおんなじの大親友トリオのひとり。

誰も来ないとそうふんで、私が隠れたのは玄関脇のポーチの影。

見つけるなり、瞳をうるませて思いきり抱きしめてくれた楓。

楓とは、なんだって話す仲。

もちろん、私の想いのことも知っていて。

全部を話すと、優汰に何度も何度も怒りながら、一緒に大泣きしてくれた。


鼻歌交じりに登校してきたたっくんは、ギョッと目をむいて、あたかもまるで、Gを見たかの勢いで体を仰け反らせた後。

なんだかんだ、やっぱり優しい。

ひとつポンと頭をなでてそのまま行った。


そんな、たっくんは私の泪を増長させることにしか、ならなかったのだけど。