『殺意』の素質。

松岡は龍宇にそう言い放った。

「例えば、そう…ムカつく奴がいる。どうにも腹が立ってしょうがねぇ奴だ。心の中で、いや、口に出してもいい。『アイツぶっ殺してやりてぇ』と呟く。だが本当にはやらねぇ。それが普通の人間止まりだ」

当然の事だ。

人間誰しも、一時の感情の高まりで、そう考える事はある。

しかしすぐにその感情にはブレーキがかかる。

人間には、理性があるからだ。

「そのブレーキがかからねぇ奴もいる。自制心がねぇ奴だ。感情のコントロールができねぇ奴。畜生に限りなく近い人間がそうだ」

「…俺がそうだというのか」

松岡を睨む龍宇。

「違ぇよ」

松岡は笑った。

「おめぇに自制心がねぇとは思えねぇ。今こうして、殴りかからずに俺の話を聞いているからな」