「はい、次行くよー!!」
ジャージ姿のアイツはバットを握り、部員たちを相手にノックを始める。
俺はその姿を見つめながらただ口をあんぐり開けていた。
『龍先生、あれが先生の好きな人??』
そんな俺のところへ瑛司がやって来た。
『あぁ…まあな』
俺はそう答え、夏希を見つめる。
突然俺のところに現れた夏希は
「桐ちゃん、久しぶり!」
と、だけ言って俺の横を通り過ぎて行った。
俺へのあいさつはそれだけ。
夏希は部員たちを集めた。
で、今の状況。
『キレイって言うよりは格好いい、って感じの人だよね』
瑛司はニコッと笑う。
確かに瑛司の言う通りだ。
昔の面影を残し、そのまま大きくなった夏希
キレイとは言えないが
格好いいのは事実
『でもさ、なんでノックなんてやってるの?
龍先生と話さなくていいの??』
瑛司、よく言ってくれた。
俺はアイツと話をしなきゃならない。
なのにアイツと来たら楽しそうに笑いながらノックしてて。
思わず
『はぁ~…』
と、特大の溜め息をついた。