雨の音が響く教室は、少し薄暗い。

さっきまで、私の前で勇気を振り絞っていた男子はどこかへ行った。

代わりに、幼馴染みの足音が聞こえた。


「また振ったの?」


呆れたように言う彼に、窓の外を眺めたまま返事をする。


「うん」

「カッコいいって有名なやつなのに…」


そう言って苦笑いを浮かべた彼に視線を移した。

私が好きなのは貴方だ、と、心の中で言う。


「なんで振ったの?」


訳が分からないって感じの顔をした彼に、いたずら心が湧いた。


「……君が好きだから」


固まった彼。ちょっと笑える。

嘘だろって顔。少し悲しい。

沈黙に、耐えられなくなって嘘を吐いた。


「…嘘だよ。本気にした?案外バカなのね。」


そう言ってやっと、彼の硬直が解ける。

鼻で笑うみたいな言い方。
私、可愛くないなって、自分でも思う。

少し他愛のない話をして、彼が去った。


誰もいない教室は静かだ。

誰もいない空間に、そっと言葉を落とす。





「…嘘だよ。貴方が大好き」





誰にも拾ってもらえない。
虚しい告白。


窓を打ち付ける雨の音が強くなった気がした。

冗談混じりの告白は、この雨が洗い流して。
きっと覚えているのは、この教室だけ。



この教室だけが、私の想いを知っている。









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