私は彼の胸に顔をうずめたまま言う。
「だから…いつもはこうやって私を抱きしめたりとか…しないじゃない。」
すると、ゼロは
わかってないな、と小さく呟く。
「いつもの俺が、本当の俺だとは限らないだろ?」
そう言うと、ゼロはいきなり私に体をぐっ、と預けた。
支えきれずに私は後ろに倒れこむ。
柔らかい感触が背中を包んだ。
倒れてから数秒後状況を把握する。
私、ベットに押し倒されたんだ。
ゼロは私の体から腕を離すと顔の横に手をついた。
ゼロの顔が見たこともないぐらい至近距離にある。
私はさらに心臓の鼓動が速くなる。
一度見てしまった彼の瞳から目が離せない。
ゼロは、まっすぐ私を見つめたまま囁いた。
「…俺だって、魔法が解ければガキじゃねぇんだぞ…?」
ゼロは、初めてこの町に来た時の夜と同じセリフを言う。
ただ、あの時とは何もかもが違っていた。
私は、ぱっ、と彼から目をそらす。
心臓の音も大きくなっていく。
ゼロにも丸聞こえなぐらい。
え、相棒って、そういう仲になる人のことを言っていたの?
私はこんな状況に陥ったこともないし、ましてや恋なんてしたことがない。
何をすればいいのか、何を話していいのかわからない。
私が頭をフル回転させていると、
ゼロがふっ、と笑った。
「フィオネ、顔、真っ赤。そんなに反応されると、こっちまで照れてくるんだけど。
…あの夜の余裕はどうしたの?」



