ゼロの言葉にジンは顎に手を当てて、少し迷うように言う。
「うーん…出来なくはないけど…。
僕はその事に集中しちゃうから、ゼロの手助けとか、フィオネちゃんを守ることとかに気を回せないよ?」
第一、魔獣をここに誘導して来なくちゃならないだろう?
と、ジンはゼロを見る。
ゼロは再び難しい顔をして考え込んでしまった。
「私が魔獣をおびき寄せるわ。」
その時、私の口は自然に動いていた。
二人は驚いた様子でこちらを振り向いた。
「何言ってんだよフィオネ。
一頭だけだとはいえ、魔獣だぞ?魔力もないお前には危険すぎる。」
ゼロは険しい顔で私を見る。
ジンも、ゼロの言葉に頷く。
「そうだよフィオネちゃん。
僕たちはもしもの時、君を助けに行く余裕がないんだ。」
私は二人の言葉を聞いて、力強く説得する。
「大丈夫よ!二人とも。
ゼロ、闇町で鍛えた、私の足の速さを知っているでしょう?」
私はゼロの方を見る。
確かにそれは認めるが……
と、ゼロは呟く。
「信じて、任せて。私はゼロの相棒でしょう?」
私は凛と言い放った。
その瞬間、二人は目を見開いた。
ゼロが、ふぅ、と息を吐く。
「…命の危険を感じたらすぐ逃げろ。」
少しの沈黙の後、ゼロは続ける。
「……理由も聞かずに俺について来てくれるやつなんて、フィオネぐらいなんだからな。
……死ぬなよ、相棒。」
ゼロの言葉に、私は笑って頷いた。