ゼロは、私が闇町の魔法を解くと言った時、“お人好しだな”と言った。




“あれだけ大切に思ってた家族を殺されたんだぞ”、と。




それはゼロ自身の言葉でもあったんだ。






ジンは話を続ける。






「それから何年か過ぎて、ゼロが十八歳になった時、いきなり、ゼロの家に都市から、後任の国王のダリシーンがやって来たんだ。」





ダリシーンは、先代の大臣で、ゼロを暗殺しようと、魔法使いを仕向けた張本人でもあった。





「ゼロは混血とはいえ、禁忌を侵した訳ではないから、殺すことができなかったんだ。


それに、ゼロ自身の魔力も相当強かった。


だからダリシーンは、ゼロを少年の姿にして魔力を封じ込めることで、正式な王の後継者が世間に出ることを防いだんだ。」






そうか





本当なら、先代の国王の血を引いているゼロが王になるはずだったんだ。





「全ては、ダリシーンが企てたことなんだよ。」





ダリシーンを、私は見たことがないけれど



自分が国王になる為に、ゼロの人生を狂わせたという話が本当なんだとしたら。





そんな奴が治める国が良くなるはずなんてない。






「フィオネちゃん……ゼロはあまり多くを語ろうとしないと思う。


あいつは人との心の距離が遠すぎるから。」






でも、とジンは続ける。






「あいつはフィオネちゃんに会って、少し変わったような気がするよ。


今はまだほんの少しだけだけど。」






私に会って……?






「ゼロ自身も気づいてないぐらいの少しの魔力の変化だけど、きっと、それはこの先大きく変わるかもしれないよ。」







ジンは、にこっ、と微笑んで私を見た。